タイで冷蔵・冷凍物流の見積を複数社から取ると、金額に大きな差が出ることがあります。しかしその差の多くは「条件が揃っていない」ことによるものであり、安い見積を選んだ結果、運用後に追加費用・品質トラブル・業者変更コストが発生するケースが少なくありません。見積比較で本当に見るべきポイントを整理します。
冷蔵・冷凍物流の見積は、以下の条件が全社で統一されていないと正しく比較できません。見積を依頼する前に、これらの条件を明確にして全社に同一条件で提示することが最初のステップです。
見積条件として統一すべき項目:
□ 温度帯
具体的な内容: 冷凍(−18℃以下)・冷蔵(0〜5℃)・定温(10〜15℃)のどれに該当するか、あるいは複数の温度帯が混在するか。
□ 配送エリア
具体的な内容: バンコク市内・近郊(周辺県)・地方(各地方都市など)のどこか、また具体的な配送先の地域。
□ 配送先数
具体的な内容: トラック1台あたりで巡回する平均の店舗数、および想定される最大の店舗数。
□ 配送頻度
具体的な内容: 週に何回の配送が必要か、また1日あたり何便の運行を想定しているか。
□ 納品時間指定
具体的な内容: 各配送先での納品時間の指定(タイムウィンドウ)があるかないか。また、遅延や早着の許容誤差はどの程度か。
□ 荷姿
具体的な内容: 荷物の形態がパレット、ケース(段ボール)、バラのどれか。また、それぞれの重量やサイズの目安。
□ 保管量
具体的な内容: 倉庫に保管する際のボリューム(パレット数やケース数)の目安。
□ 入出庫頻度
具体的な内容: 倉庫に対して1日あたり、または週あたりに何回の入庫・出庫作業が発生するか。
これらが揃っていない状態での見積比較は、「条件の違う商品の価格を並べて比べる」ことと同じです。
タイの物流会社の見積では、基本料金に含まれる範囲が会社によって大きく異なります。金額が安く見える見積ほど、含まれていない項目が多いケースがあります。
基本料金に含まれていないことが多い項目:
■ 荷待ち料金
内容: 納品先の店舗や倉庫での荷受け待ち(待機時間)が、あらかじめ設定された一定時間を超えた場合に発生する追加費用。
■ 時間外料金
内容: 指定された配送時間が、早朝・深夜、あるいは土日・祝日の運行にあたる場合に適用される割増運賃。
■ 再配達料金
内容: 納品先での受取人の不在、あるいは荷主・店舗側の時間ミスによって商品を持ち帰り、再度配達を行う際に発生する費用。
■ 燃料サーチャージ
内容: 軽油などの燃料価格の変動リスクを吸収するため、市場価格に応じて基本運賃とは別に変動・加算される費用(タイでも別途請求されるケースが増えています)。
■ 温度記録提供費
内容: 輸送中・保管中の温度ロガー(記録装置)のデータや、管理レポートを顧客へ開示・提供するにあたり、別途手数料がかかる場合がある。
■ 積み込み・ピッキング費
内容: 配送車両へ荷物を積み込む作業や、倉庫内での商品ピッキング(仕分け)などの実作業費が、純粋な配送運賃(トラックのチャーター費など)とは別建ての料金体系になっている場合。
確認方法:「この見積に含まれていないコストは何ですか」と直接質問することが最も確実です。
複数店舗への配送見積では、「1台で何店舗・何時間で回れるか」という設計の現実性を確認してください。バンコクの渋滞を考慮せずに1台で過剰な店舗数を設定している場合、実際の運用で必ず遅延・品質問題が発生します。
確認すべき点:
バンコク市内の渋滞を前提とした配送計画になっているか
1台あたりの店舗数の上限設定はどのように決めているか
渋滞・荷待ちが発生した場合の対応方針があるか
配送順の設計(温度管理上の優先順位)はどう考えているか
安い見積の背景に「非現実的な店舗数設定」がある場合、実際の運用コストは見積より大幅に高くなります。
「冷蔵対応」「冷凍対応」という言葉だけでは比較になりません。以下の具体的な項目を全社に確認してください。
□ 実際の管理温度
確認方法: 「冷蔵対応」「冷凍対応」といった曖昧な表現ではなく、「具体的に何℃から何℃の範囲で管理しているか」を明確な数値として確認する。
□ 温度ロガーの搭載
確認方法: 一部の車両だけでなく、自社便・協力会社便を含めた「全車両に温度記録装置(温度ロガー)を標準搭載しているか」の搭載率を確認する。
□ 温度記録の提供
確認方法: 万が一のときだけではなく、「日々の配送ごとに、実際の温度推移データを顧客(荷主)へ速やかに提供できる体制があるか」を確認する。
□ 積み込み環境
確認方法: 車両が走っている間だけでなく、「倉庫から車両の荷台へ荷物を積み込む際、どのような環境(外気に触れないドックシェルターがあるかなど)で行われているか」を作業フローや現場写真で確認する。
□ 逸脱時の基準
確認方法: 「何℃を超えたら温度逸脱(管理ミス)とみなすか」という具体的な閾値(しきい値)と、それが発生した際の「報告ルート、商品の廃棄・受け取り判断、賠償手続き」がマニュアル化されているかを確認する。
温度記録を提供できない会社は、温度管理の実態が不透明です。記録の提供を断る会社は選定から外すことを推奨します。
見積比較の段階で、トラブル時の責任条件を確認しておくことは非常に重要です。後から確認しようとすると、契約後では条件変更が難しくなります。
確認すべき責任条件:
□ 温度逸脱時の賠償
確認内容: 管理温度の規定を超えてしまった場合、誰の責任(倉庫側か配送側かなど)とし、具体的にどの範囲(商品原価、機会損失、廃棄費用など)まで賠償されるか。
□ 商品事故時の対応
確認内容: 荷受・輸送・保管のプロセスで商品の破損、汚損、紛失が発生した際、どの範囲まで補償されるか。また、その際の写真付き報告書などの提出フローはどうなっているか。
□ 遅延時の対応
確認内容: 激しい渋滞等で指定の納品時間を大幅に遅延した場合の緊急連絡体制はどうなっているか。また、遅延によって店舗側が受け取りを拒否した場合の補償の有無はあるか。
□ 保険の有無
確認内容: 物流会社が「運送事業者責任保険(貨物保険)」に加入しているか。また、重大な事故が発生した場合の一事故あたり、あるいは車両1台あたりの補償上限金額(リミット)はいくらか。
賠償条件が曖昧・または「一切責任を負わない」条件の会社は、実際のトラブル時に対応が期待できません。
以下を全社統一で確認した上で比較してください。
条件統一チェック(依頼前):
温度帯を数値で指定した
配送先・エリア・店舗数を明示した
納品時間指定の条件を伝えた
荷姿・重量・保管量を伝えた
見積受領後チェック:
基本料金に含まれない費用を確認した
荷待ち・時間外・再配達の扱いを確認した
燃料サーチャージの扱いを確認した
実際の管理温度を数値で確認した
温度記録の提供可否を確認した
Multi-drop配送の店舗数設定が現実的か確認した
事故・逸脱時の賠償条件を確認した
タイの冷蔵・冷凍物流の見積比較で最も重要なのは、金額を見る前に条件を揃えることです。条件が揃っていない見積を並べても、正しい判断はできません。また金額だけで選んだ結果、運用後に品質・コスト・管理の全てで問題が発生するケースは珍しくありません。
条件整理の段階からご相談いただければ、MONでは見積の前提となる物流条件の整理もサポートします。