タイで冷凍輸送を導入する際、「冷凍車があれば問題ない」という前提で進めると、実務で想定外のトラブルが発生するケースがあります。タイの高温環境・交通事情・物流会社の品質差を踏まえた冷凍輸送の実務を解説します。
タイで冷凍輸送の導入・見直し・切り替えをご検討中の方は、まずはお気軽にご相談ください。
① 外気温が高く温度回復に時間がかかる タイでは外気温が30〜35℃に達するため、荷台のドアを開けた瞬間から温度上昇が始まります。積み込み・納品の度に温度が変動し、冷却装置が追いつかないケースがあります。アイスクリームのように特に温度変動に敏感な商品では、この影響が品質に直結します。
② Multi-drop配送との相性が難しい 複数店舗を1台で回るMulti-drop配送では、ドア開閉の回数が増えるほど荷台内温度が上昇します。冷凍配送でMulti-dropを安定運用できる物流会社はタイ国内でも限られており、経験と運用設計の両方が必要です。
③ 積み込み・待機時の管理が盲点になりやすい 冷凍倉庫から荷台への積み込みが適切な環境で行われていない場合、その時点で温度逸脱が発生します。また、納品先での荷待ち中に冷却装置を止めてしまうドライバーの判断ミスも、タイでは発生することがあります。
④ 解凍・再凍結のリスクが見えにくい 温度逸脱が発生しても、商品が再凍結されれば外見上は問題がわかりません。しかし内部では品質劣化・細菌増殖が進んでいる可能性があります。温度ロガーによる記録がなければ、この問題は見逃されます。
タイで冷凍輸送を依頼する際、「冷凍車を保有している会社かどうか」で判断されることがあります。
もちろん、それは大前提として重要です。ただし、冷凍輸送ではそれだけでは十分ではありません。本当に重要なのは、以下のような点です。
希望する温度帯を安定して維持できるか
積み込み時・待機時・納品時の温度上昇リスクを抑えられるか
多拠点配送や時間指定に対応できるか
バンコク市内と地方配送で無理のない運用ができるか
納品先の受入条件や荷待ち時間に対応できるか
配送品質とコストのバランスが取れているか
つまり、タイの冷凍輸送では、「冷凍車があるか」ではなく、「安定した冷凍輸送を実行できるか」が重要です。
同じ「低温輸送」でも、冷凍と冷蔵では要求事項が根本的に異なります。
■ 温度帯
冷凍輸送: −18℃以下
冷蔵輸送(チルド): 0〜10℃
■ 温度逸脱の影響
冷凍輸送: 一度溶けると元に戻らない、不可逆的な品質劣化が起こる
冷蔵輸送(チルド): 逸脱の程度によっては、速やかに適正温度に戻せば回復可能な場合もある
■ 設備コスト
冷凍輸送: 高い(強力な冷却性能を持つ冷凍専用車が必要なため)
冷蔵輸送(チルド): 中程度(一般的な冷蔵対応設備で運用可能)
■ 積み合わせ
冷凍輸送: 基本的には冷凍商品同士での輸送が必須
冷蔵輸送(チルド): 設定温度帯が近い商品であれば、他の商品との混載が可能
■ 特に難しい点
冷凍輸送: 配送先でのドア開閉時に起こる庫内温度の上昇や、それによる「一度溶けて再度凍る(再凍結)」リスクの防止
冷蔵輸送(チルド): 凍らせず、かつ温めずという「チルド帯の狭い温度範囲」を常に安定して維持し続けること
よくある誤解:「冷蔵より冷凍の方が管理しやすい」は正しくない 「とにかく低温を保てばいい冷凍の方が簡単」と思われることがありますが、冷凍輸送には冷蔵にはない固有のリスク(再凍結・アイスクリームの再結晶化等)があります。商品特性に応じた専用の運用設計が必要です。
パターン①:輸入冷凍食品の国内配送 港・空港から冷凍倉庫への搬入後、飲食店・ホテル・小売店・卸先へ配送。輸入通関のタイミングと冷凍倉庫の受け入れ体制を事前に連携させておかないと、通関待機中に温度管理が途切れるリスクがあります。FDA登録・通関対応と冷凍物流を一体で管理できるパートナーが重要です。
パターン②:アイスクリーム・冷凍デザートの多店舗配送 コンビニ・スーパー・飲食チェーンへのMulti-drop配送。アイスクリームは冷凍食品の中でも特に温度管理が厳しく、通常の冷凍配送とは別の運用設計が必要です。詳細はアイスクリーム物流をご参照ください。
パターン③:セントラルキッチンからの冷凍品配送 製造した冷凍加工品・冷凍ミールを各店舗へ定期配送。製造スケジュール・出荷タイミング・配送ルートの連動設計が重要で、いずれかがずれると納品遅延や品質トラブルにつながります。
パターン④:食品メーカー・輸入商社から卸・小売への大量輸送 パレット単位の大量冷凍品をまとめて輸送するケース。車両の大きさ・積載効率・輸送時間の最適化が主な課題になります。
□ 実際の管理温度
確認すべき内容: 走行中だけでなく、倉庫からの積み込み時や現場での待機中も含めて、常に「−18℃以下」を安定維持できるか。
□ 温度ロガーの搭載
確認すべき内容: 運行する全車両に温度記録装置(温度ロガー)が標準搭載されているか。また、その記録データを顧客に提供できるか。
□ 積み込み環境
確認すべき内容: 冷凍倉庫から車両の荷台へ移動させる際、外気にさらされず、温度管理された環境(ドックシェルターなど)で行われているか。
□ Multi-drop実績
確認すべき内容: 冷凍状態を維持したままでの複数店舗(Multi-drop)への配送経験があるか。また、1台あたり最大何店舗まで対応可能か。
□ アイスクリーム対応
確認すべき内容: 一般の冷凍食品よりもさらに温度変化に敏感なアイスクリームに対して、別格の「専用運用設計」やノウハウがあるか。
□ 逸脱時の対応
確認すべき内容: 万が一の温度逸脱(既定温度を超えてしまうトラブル)が発生した場合の報告手順、商品の廃棄判断、賠償範囲の取り決めがあるか。
□ 倉庫との連携
確認すべき内容: 冷凍倉庫での保管から配送までを一体でスムーズに管理できるか、または倉庫と配送の間で緊密な連携の仕組みがあるか。
MONでは、タイ国内の冷凍輸送を単なる車両手配ではなく、冷凍倉庫・出荷・配送・納品条件対応を一体で設計・運用しています。
対応している主な領域:
バンコク市内・近郊の冷凍配送
アイスクリーム・冷凍デザートの専用配送
輸入冷凍食品の倉庫保管から配送までの一体運用
セントラルキッチンからの多店舗冷凍配送
小ロット・高頻度の冷凍配送
タイで冷凍輸送を導入する際に最も注意すべきは、温度逸脱が発生しても外見上わからない「再凍結リスク」です。温度ロガーによる記録・積み込み環境の確認・Multi-drop配送の運用設計という3点を必ず確認した上で物流パートナーを選んでください。
以下のタイプの冷凍車両を自社で保有して、日々運行しています。