タイに進出する日本企業の多くが、食品物流において最初に直面するのが「日本での常識が通じない」という現実です。温度管理・納品時間・物流会社との連携など、日本では当たり前のことがタイでは当たり前でないケースが多くあります。このページでは、実務上よく発生する問題と、その背景・対策を具体的に解説します。
タイの物流会社が「冷蔵対応」と言っていても、実際の管理温度が0〜5℃ではなく8〜12℃だったというケースがあります。日本では冷蔵=0〜10℃以内が一般的な認識ですが、タイでは物流会社によって解釈が大きく異なります。
日本との主な違い:
対策: 契約前に「どの温度帯をどのように管理するか」「温度ロガーの記録を提供できるか」を書面で確認してください。口頭での「対応できます」だけでは不十分です。実際に試験運用を行い、温度記録を確認してから本格導入することを推奨します。
レストランチェーンや小売店舗への配送では、1台のトラックで複数の店舗を回るMulti-drop配送が一般的です。しかし、タイではこのMulti-drop冷蔵・冷凍配送をきちんと運用できる物流会社は限られています。
Multi-drop配送で発生しやすい問題:
納品順の設計が不適切で、最後の店舗への到着が大幅に遅れる
ドア開閉を繰り返すことで荷台内温度が上昇する
店舗ごとの受入条件(時間・数量・荷姿)の違いに対応できない
渋滞による遅延が発生しても連絡がない
対策: 物流会社に「Multi-drop配送の実績があるか」「1台で何店舗まで対応しているか」「渋滞時の対応方針はどうか」を具体的に確認してください。実績のない会社に任せると、店舗側のオペレーションにも影響が出ます。
日本では「午前10時〜11時の間に納品」という時間指定が当然のように守られますが、タイでは同じ運用が難しいケースがあります。バンコクの慢性的な渋滞に加え、物流会社側の配送計画の精度が低い場合、時間指定が形骸化することがあります。
納品遅延が引き起こす実際の問題:
飲食店では仕込みの開始が遅れ、開店に影響する
受入担当者が不在になり、再配達が発生する
冷蔵・冷凍品が受け取られず、品質劣化リスクが生じる
チェーン店の本部からクレームが来る
タイで時間管理を機能させるための対策:
渋滞を前提とした配送スケジュールの設計(早出し・ルート最適化)
遅延発生時の連絡ルールを事前に合意しておく
納品時間の許容幅を現実的に設定する(厳しすぎると全て失敗になる)
物流会社が配送進捗をリアルタイムで把握・報告できる体制があるか確認する
タイの高温多湿な環境では、輸送・保管中の温度逸脱リスクが日本より高くなります。問題は温度逸脱そのものだけでなく、「逸脱が発生したことに気づかない」「気づいても報告されない」というケースがあることです。
温度逸脱が発生しやすい場面:
タイでは、冷蔵倉庫の運営会社と配送会社が別々で、連携が取れていないケースが多くあります。この「分断」が原因で起きる問題が、日本企業には見えにくい。
分断によって発生する典型的な問題:
倉庫からの出荷タイミングと配送車両の到着がずれ、荷物が常温環境で待機する
出荷指示が配送会社に伝わっていない
在庫情報が倉庫と荷主で一致していない
トラブル発生時に倉庫・配送のどちらに連絡すればいいか不明
対策: 保管と配送を一体で管理できる物流会社を選ぶことが根本的な解決策です。どうしても別会社を使う場合は、情報共有の仕組み・責任分界点を明確に定めてください。
日本企業の場合、タイ現地の物流状況を日本本社に報告・説明する必要があります。しかしタイの物流会社の多くは、日本企業が求めるレベルの記録・レポートを標準では提供していません。
日本本社が求めやすいが、タイでは対応が難しいこと:
温度記録の定期レポート提出
納品完了の写真付き報告
月次の物流実績サマリー
異常発生時の原因分析レポート
日本語でのコミュニケーション
対策: 最初の物流会社選定の段階で「どのような記録・報告が提供できるか」を確認してください。日本語対応または日系品質を重視する物流会社を選ぶか、現地担当者が報告書を作成する体制を社内で整えることが必要です。