タイで冷蔵物流を構築する際、「倉庫は倉庫会社、配送は配送会社」と別々に発注するケースと、「倉庫も配送も同じ会社」に一括委託するケースがあります。どちらが正解かは条件によりますが、タイの物流環境では一括委託が有利なケースが多くあります。その理由と、一括委託で失敗しないための確認事項を整理します。
■ 倉庫と配送の関係
分離発注: 保管(倉庫)と配送を、それぞれ別の物流会社が担当する
一括委託: 保管から配送まで、すべて同じ物流会社が一括して担当する
■ 情報共有
分離発注: 倉庫会社と配送会社の間で、その都度連絡や調整が必要になる
一括委託: 同じ会社の中(社内)でスムーズに情報共有が完結する
■ 責任の所在
分離発注: トラブル(商品の破損や温度逸脱など)が発生した際、どちらの責任か曖昧になりやすい
一括委託: すべて一社に集約されているため、責任の所在が明確である
■ 温度管理の連続性
分離発注: 倉庫から配送車両への引き渡し時に、温度管理の連携が途切れやすいリスクがある
一括委託: 倉庫の出荷から最終納品先への到着まで、途切れることなく一貫した温度管理が可能
■ コスト
分離発注: 倉庫と配送でそれぞれ安い会社を選ぶなど、個別最適の交渉はしやすい
一括委託: まとめて依頼することで、スケールメリット(ボリュームディスカウント)が出やすい
■ 運用の複雑さ
分離発注: 荷主企業が両社の間に立って調整する必要があり、管理コストや手間が高い
一括委託: 問い合わせやトラブル時の対応窓口が一本化されるため、運用が非常にシンプルになる
理由①:温度管理の「つなぎ目」がなくなる 冷蔵物流で最も温度逸脱が起きやすいのは、倉庫から配送車両への積み込み時・引き渡し時という「つなぎ目」の場面です。倉庫と配送が同じ会社であれば、この場面での管理責任が明確になり、手順の徹底がしやすくなります。
理由②:出荷タイミングと配送出発が連動する 分離発注の場合、倉庫側の出荷準備が完了しても配送会社への連絡・調整に時間がかかり、その間に荷物が常温環境で待機するケースがあります。一括委託であれば出荷と出発が一体で動くため、この待機時間を最小化できます。
理由③:Multi-drop配送の積み込み設計が最適化される 複数店舗への配送では、倉庫での仕分け・積み込み順が配送品質に直結します。倉庫と配送が同じ会社であれば、「この店舗は最初に届けるから一番後ろに積む」という連動設計が自然に行われます。
理由④:トラブル時の責任が明確になる 温度逸脱・誤納品・遅延が発生した場合、分離発注では「倉庫側の問題か・配送側の問題か」の責任追及に時間がかかります。一括委託であれば原因特定と対応が迅速になります。
理由⑤:窓口が一本化され、管理コストが下がる 倉庫会社・配送会社それぞれへの発注・確認・報告対応が一本化されることで、荷主側の管理工数が減ります。特に日本本社への報告が必要な日系企業では、この効果が大きい。
一括委託が常に最適とは限りません。以下のケースでは分離発注の検討も必要です。
□ 特定エリアへの配送に強い専門会社がある
理由: 一括委託先の配送網や配送力が、特定のエリア(地方など)によって不均一な場合、そのエリアに抜群に強い地元配送会社に分離発注した方が品質やコストで有利になるため。
□ 保管量が非常に大きく専用倉庫が必要
理由: 扱う商品のボリュームが膨大で、特殊な保管環境(専用倉庫など)が最優先される場合、配送との一体運用よりも「保管の専門性やキャパシティ」を優先して別々の会社に依頼する方が合理的であるため。
□ 配送頻度が低く車両チャーターで十分
理由: 毎日の定期配送ではなく、配送頻度が極めて低い、あるいはスポットでの車両チャーターで事足りるような小規模運用の場合は、一括委託による連携の恩恵(スケールメリット)があまり出ないため。
□ 既存の倉庫契約が長期で残っている
理由: 現在利用している倉庫の定期契約や違約金などの縛りがあり、今すぐ一括委託へ切り替えるコストやリスクが、切り替えた後のメリットを上回ってしまうため。
一括委託先を選ぶ際に確認すべき項目です。「できます」という口頭回答だけでなく、実態を確認してください。
□ 冷凍・冷蔵倉庫の実際の管理温度
確認すべき内容: 倉庫内および配送車両の双方において、それぞれの温度帯(冷凍・冷蔵など)に応じた安定した温度管理が常に維持できているか。
□ 温度ロガーの搭載と記録提供
確認すべき内容: 運行するすべての車両に温度記録装置(温度ロガー)が標準搭載されているか。また、そのデータを定期的に(または依頼に応じて)顧客へ提供できるか。
□ 積み込み環境
確認すべき内容: 倉庫から車両の荷台へ荷物を移動させる際、外気にさらされず、温度管理された環境(ドックシェルターなど)で行われているか。
□ Multi-drop配送の実績
確認すべき内容: 複数店舗を巡回するMulti-drop(マルチドロップ)配送について、具体的に「何店舗くらい」「どのエリア(バンコク市内や地方など)」への配送実績があるか。
□ トラブル時のSLA(サービス品質保証)
確認すべき内容: 万が一の温度逸脱(既定温度を超えてしまうトラブル)や配送遅延が発生した際、どのような基準で「報告」や「対応」を行うかが明確に定められているか。
□ データ共有の方法
確認すべき内容: 倉庫の在庫情報、配送の進捗状況、輸送中の温度記録などを、どのようなシステムや方法(WEBシステム、レポートなど)で荷主へ共有するか。
□ 賠償条件
確認すべき内容: 輸送中・保管中の温度逸脱や、荷割れなどの商品事故が発生した際、どの範囲まで物流会社が賠償するのかが契約書に明記されているか。
一括委託はコストが高くなると思われがちですが、実際には以下の要素を考慮すると、総合コストが下がるケースがあります。
倉庫・配送の調整コスト(社内工数)の削減
温度逸脱・誤納品・再配達コストの削減
トラブル対応・クレーム処理コストの削減
複数社との契約管理コストの削減
一方で、一括委託先が実質的に下請けに丸投げしている場合、品質管理の一元化というメリットが失われます。委託先が自社で倉庫・車両・ドライバーを管理しているかを確認してください。
タイの冷蔵物流では、倉庫と配送の「つなぎ目」での品質管理が最大の課題です。Multi-drop配送・時間指定・温度記録が必要な運用では、一括委託の方が品質・コスト・管理の全てで有利なケースが多い。ただし委託先の実力と契約条件の確認が前提です。